なぜ翻訳字幕はタイミングがずれるのか?文字数増加が原因だった
Dzianis Kukareka, 創業者 · 更新日

タイミングのきちんと合った英語の字幕ファイルをドイツ語に翻訳して、再生してみてください。何も動かしていないのに、字幕が急にせわしなく感じられるはずです。タイムスタンプは同じでも、テキストが変わったからです。同じことを言うのに、翻訳が原文と同じ文字数で済むことはまずありません。しかも字幕では、すべての文字を決まった秒数の中で読ませる必要があります。これをテキスト膨張と呼びます。起きることは予測でき、どこに出るのかさえわかれば直せます。
翻訳するとどのくらい長くなるのか
ローカライズの現場では、何十年も前からこれを測ってきました。翻訳したアプリでボタンから文字がはみ出すのもこのせいで、W3Cは翻訳によるテキストの長さの変化についての資料を公開しています。以下は英語から翻訳した場合のおおよその目安です。実際の数字はテキストによって変わるので、あくまで参考程度に見てください。
| 翻訳先の言語 | 英語と比べた長さの目安 | 字幕への影響 |
|---|---|---|
| ドイツ語 | 長くなる、20〜35%増えることも多い | 行が詰まり、複合語を分けられない |
| フランス語 | 15〜25%長くなる | 最初から最後まで行が少しずつあふれ気味 |
| スペイン語 / ポルトガル語 | 15〜25%長くなる | フランス語と同じ |
| ロシア語 / ポーランド語 | 長くなり、単語も長い | よい改行位置が見つけにくい |
| フィンランド語 | 同程度か短いが、単語がとても長い | 改行と単語がぶつかる |
| 日本語 / 韓国語 / 中国語 | 文字数はずっと少ない | 別の問題:読む速さを文字単位で数える |
| アラビア語 / ヘブライ語 | 同程度 | 課題は長さより右から左への表示 |
この表には、実は2つの別々の問題が含まれています。1つ目は膨張で、同じ文により多くの文字が必要になります。2つ目は単語の長さです。ドイツ語やフィンランド語は1つの長い単語に多くの意味を詰め込み、その単語は行をまたいで分けられません。そのため少し膨張しただけでも、収まりの悪い行ができてしまいます。中国語、日本語、韓国語では事情が逆です。文字数はずっと少ないものの、これらの文字の読み取り速度の上限は1文字単位で決められているので、行が短いからといって速く読めるとは限りません。
字幕がいちばん影響を受ける理由
字幕のキューは1つひとつが、テキストと時間の取り決めです。この文字数を、この秒数で読めるようにする。1行あたり約42文字、1秒あたり15〜17文字という一般的な上限は、この取り決めに無理が出ないようにするためのもので、字幕の1行の長さのルールで詳しく説明しました。翻訳はテキストを変えますが、時間はまったく動かしません。
15文字/秒で無理なく読めていた英語の38文字の行が、ドイツ語では50文字、20文字/秒を超える行になります。そんな速さで読める人はほとんどいません。
英語では2つのフレーズの間にきれいに収まっていた改行が、ドイツ語では複合語の真ん中に来てしまいます。「Geschwindigkeits-」で行が終わり、「begrenzung」が次の行で待っているような字幕は、誰も見たくありません。
英語なら2行に収まっていたキューが3行必要になり、これはほとんどのスタイルガイドで認められていません。そうでなければ、プレーヤーが無理なく表示できる幅を超えて横に広がってしまいます。
字幕翻訳者はどう直しているか
翻訳を圧縮する。何よりもまずこれです。字幕はそもそも、話された内容を一語一句記録するためのものではありません。意味を保ったまま、つなぎの言葉を削り、短い言葉を選ぶのが仕事の核心です。原文に忠実でも読み切れない行より、自然で少し短い行のほうがずっといい字幕になります。
翻訳先の言語に合わせて改行し直す。英語のフレーズでうまくいった改行位置は、ドイツ語の複合語やロシア語の格語尾には通用しません。改行は言語ごとに決め直す必要があります。
余裕があればキューを切り直す。1つの文にまたがる短いキュー2つをまとめたり、直後の間までキューを延ばしたりします。映像はそのままで、変わるのはテキストを表示する時間枠だけです。
映像に手を入れるのは最後。手間をかける価値のある市場なら、編集のテンポを落としたり吹き替えにしたりすることで、テキストだけでは解決できない問題も片付きます。その判断は字幕と吹き替えの比較で取り上げています。
トラブルの大半を避けるワークフロー
最初からテキスト膨張を織り込んだ手順にしておけば、対処は難しくありません。
プレーンテキストではなく字幕ファイルを翻訳する。字幕翻訳ツールならキューとタイムスタンプが崩れないので、レビューでは修復ではなく長さの確認に集中できます。仕組みはタイミングを保ったままSRTを翻訳する方法で説明しています。
言語ごとに詰まった行をレビューする。いちばん密度の高いキューを探しましょう。膨張のしわ寄せが来ているのはそこです。1秒あたりの文字数を数えるカウンターがあれば、すぐに見つかります。
原文をマスターとして扱う。間違いは原文で直してから、翻訳し直しましょう。手作業で修正した言語ファイル同士は少しずつずれていき、その後の修正を何度も繰り返す羽目になります。
台本を自分で書くなら、翻訳しやすい原文にする。短い文のほうが翻訳しても崩れにくいものです。ローカライズのスタイルガイドはアプリ開発者に何年も前から同じことを伝えてきましたし、BBCの字幕ガイドラインのような公開の字幕基準も、同じ読み取り速度の考え方に立っています。
よくある質問
タイミングは同じなのに、ドイツ語の字幕が速く感じるのはなぜ?
読む速さは1秒あたりの文字数で測られ、ドイツ語版のほうが文字数が多いからです。タイミングが同じままテキストが増えれば、速く読まなければなりません。行を圧縮するか、改行位置を変えましょう。
言語ごとにタイムスタンプを変えるべき?
変えることはまれで、変えるとしても最後の手段です。圧縮と改行のやり直しで、タイミングに触れなくてもほとんどのキューは直ります。キューを切り直すのは、間があって秒数に余裕がある箇所だけにしましょう。
テキスト膨張は機械翻訳の問題?
いいえ。人間の翻訳者が訳しても同じように膨張します。原因は言語そのものにあり、誰が訳すかではないからです。機械翻訳だと、詰まったままの版に気づかず公開しやすくなるというだけです。
レビューにいちばん時間がかかる言語は?
ドイツ語は長さと複合語のため。中国語、日本語、韓国語は独自の読み取り速度ルールのため。アラビア語とヘブライ語は右から左への表示のためです。どの語族でも最初の翻訳は手探りで覚えながら進めることになるので、時間は多めに見ておきましょう。
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